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T-710ビデオ・デュプリケーター
T-710 Video Duplicator
参考資料(この製品の製造・販売は終了しました)
製品概要
T-710
オタリ「T-710」高速ビデオ・デュプリケーティング・システムは,マスター・テープの磁気パターンを,毎秒10 mのテープ速度で,二酸化クロム(CrO2)を磁性体とするビデオ・テープに転写するシステムです.コピー速度はNTSCの場合VHS SPモードで300倍速,VHS EPモードで900倍速,PAL/SECAMの場合はVHS標準モードで428倍速に達します.
T-710は,二酸化クロム特有の温度特性を用いた高速転写技術を実用化したものです.熱磁気転写(Thermal Magnetic Duplication:TMD™)と呼ばれるこの技術は,二酸化クロムをコーティングした1/2インチ幅のブランク・テープ(コピー・テープ)と,プログラムがミラー・イメージ(鏡面画像)で録画されているマスター・テープとを密着させて走行させながらコピー・テープの温度を急速に上げて,マスター・テープの磁気パターンをコピー・テープに転写するものです.テープに記録されている情報を電気的に処理(再生・録画)するのではないために,コピー速度を高めることができます.

 
TMD熱磁気転写方式高速ビデオ・デュプリケーション・システムの概要
 
非常に高い普及率を誇るVHSビデオ・デッキをターゲットとしたビデオ・ソフトのリリースは依然としてテープ・メディアがメインになっており,最新作をタイムリーに十分なボリュームで発売するためにも,ビデオ・テープの高速デュプリケーションは欠かせません.しかし,ビデオ信号が30 Hz〜4.5 MHzという広帯域であることとヘリカル・スキャン方式が複雑であることとがボトルネックになって,高速でのビデオ複製はむずかしく,そのため,マスター・デッキで再生した信号を数百〜数千台のビデオ・デッキで録画するという従来のビデオ・テープの複製方法(リアルタイム方式)を採用すると,スペース的にも大変広い場所を必要とし,また人件費や作業効率の面でも多くの無駄を余儀なくされてしまいます.
 
オタリでは,TMD(Thermal Magnetic Duplication)方式のビデオ・ソフト・テープ用高速デュプリケーション・システムを開発し,現在までに国内/海外を含めて200台以上を出荷しています.TMDシステムを採用することにより,品質の安定したプリントを省スペースで効率良く,かつ大量に生産することが可能となります.
 
TMDの最大の特徴として,磁気転写用にレーザー熱源を採用したことがあげられます.また,マスター・テープをループさせてエンドレスとすることにより,実質のプリント時間を大幅に短縮し,大量生産を行うことができます.熱転写式プリントは,マスター・テープとコピー・テープの磁性面同士を重ね合わてテープを走行させ,さらに高圧の空気を吹き付けることによって密着性を高めて,熱転写用のレーザーを照射して行います.TMDは熱転写方式を採用しているため,高速プリントにおいてもコピー・テープの品質を高くかつ一定に保つことができます.

 
レーザー転写原理
 
Thernal Magnetic Duplication
 
TMDは二酸化クロム(CrO2)特有の温度特性を用いた高速転写技術を実用化したものです.熱磁気転写(Thermal Magnetic Duplication:TMD)と呼ばれるこの技術は,二酸化クロムをコーティングした1/2インチ幅のブランク・テープ(コピー・テープ)と,プログラムがミラー・イメージ(鏡面画像)で録画されているマスター・テープとを密着させて走行させながら,コピー・テープの温度を瞬時に130℃以上まで上げてコピー・テープの抗磁力をゼロにし,直ちに冷却することによってマスター・テープの鏡面パターンをコピー・テープに転写するものです.
 
熱源となるNd:YAG(Neodymium−Yttrium Aluminum Garnet)レーザーは極めて安定した加熱が可能で,テープのベース材についてはそのまま透過し易い性質(波長)を持ちながら,磁性面だけを130℃以上の温度まで上昇させることができます.このため,コピー・テープを傷めることなく転写を行うことができます.
 
テープに記録されている情報を電気的に処理(再生・録画)しないためコピー速度を高めることができ,マスター・テープをループ状のエンドレスをすることで連続してコピーを行うことができます.
 
注:TMDシステムに使用されるマスター・テープの抗磁力は1,500〜1,600 Oe.すなわちミラー・マスターの録画が行い易いテープです.

 
TMDによる高速デュプリケーション・システムの作業工程
 
TMDを用いた高速ビデオ・デュプリケーション・システムの作業工程は以下の三つに分けることができます.
1.ミラー・マスター作成工程:ミラー・マスター作成工程では,1インチ・マスターVTR等で再生された信号を,ミラー・マスター作成機(MMR.オタリR-750)によって1/2インチ・メタル・テープ上に通常のVHS記録パターンと鏡面対称のパターンとして記録します.MMRで作られたマスター・テープがデュプリケーター用のマスター・テープとして使用されます.
2.プリント工程:MMRで作られたマスター・テープを高速デュプリケーター(オタリT-700,T-700II,T-700III,T-710)にかけてエンドレス・テープとし,最高300倍(NTSC-SPモード)の高速度でプリントを行います.鏡面対称に記録されたミラー・マスター・テープの磁性面とコピー・テープの磁性面とを重ね合わせ,高圧空気により圧着させてレーザーを照射し,マスター・テープのパターンをコピー・テープに正常な記録パターンとして転写することによってプリントを行います.最新のT-710では2時間の映画を約24秒でコピーすることができます(NTSC-SPモードにて).
3.巻き込み工程:プリントされたコピー・テープを1/2インチ・ビデオ・テープ・ローダー(オタリT-320II,VL-352)にかけ,カセット・ハーフ(V-0)に1巻ずつ巻き込みを行います.プログラムの初めに記録されたキュー信号により,自動的に裁断を行います.T-120テープの場合は約20秒(VL-352にて)で巻き込みを完了し,ビデオ・ソフト・テープを完成します.
 
TMD System Overview

 
TMDデュプリケーターのその他の特徴
 
初めにもご紹介しました通り,TMDはマスター・テープをエンドレスとすることによって,コピー・パンケーキを停止させることなく安定した走行によりプリントを行うことができます.DCサーボ方式の採用により,安定したスピードとテンションでテープ走行を行います.また,マスター・テープとコピー・テープを重ね合わせ部分にもビデオ・ローダーから得た様々なノウハウを駆使しており,精度の高い高速走行を実現しています.
マスター・テープのエンドレス化は,TMDのスプライサーがテープの端と端をスプライスすることによって自動的に行います.作業者がテープのプログラム部分に手を触れる心配はありません.エンドレス・ループ・ビンにはT-130までのマスター・テープを収納することができます.T-710 1台のコピー能力はNTSC-SPで300倍,PAL,SECAMで428倍,NTSC-EPでは900倍となります.